西九州(長崎)新幹線について思うこと

Google Discoverで、標記に関するネット記事が流れてきた。

ところで西九州新幹線って「開業区間が中途半端」じゃないですか?

いわゆる西九州新幹線、整備新幹線の長崎ルートの解説記事である。
個人的にも博多から佐賀・長崎まで特急かもめで行くことが多いこと、出身がこのルートの中間あたりにあることから、ニュースに出てくるたび興味深く読んでいる。

この新幹線については、JR九州・長崎県・国がフル規格を推進する一方、佐賀県はフル規格に反対してきた経緯がある。
長崎県は博多・新大阪への鉄道への所要時間が大幅に短縮するメリットを享受できる一方、佐賀県特に佐賀市周辺は現状の特急かもめで30〜40分程度で博多に行くことができ、短縮効果の恩恵は薄い。
また、デメリットとしては、財政負担、並行在来線の経営分離の可能性が一般的にあげられている。

佐賀県はこうしたデメリットを把握しているため、在来線を活かすフリーゲージトレインの導入を前提に長崎ルートの整備に賛成した。しかし実際にはフリーゲージトレインの開発は頓挫(中断)したため、佐賀県以外の当事者が全線フル規格での整備を主張して、佐賀県と半目している状況である。

個人的には、佐賀県の主張に賛成で、フル規格での整備には反対である。
長崎も含めて、時短効果を考慮しても、莫大な金額をつぎ込んで建設するほどの需要があるとは思わないからである。
現状でも博多から長崎まで最大で2時間弱程度で行ける距離である。それが最短1時間29分になるというが、所詮30分程度の短縮である。30分の時短は有難いといえば有難いが、現状が博多から日帰りできてしまう所要時間である以上、莫大な財源をつぎ込んでまで建設するほどではないと思う。

それに、最大のメリットを享受するであろう長崎県についても、投資に見合うだけの需要があるか疑問である。
特急かもめに乗っているとよくわかるが、博多からの乗客の多くは佐賀で下車しており、佐賀を過ぎるとガラガラであることがよくある。
逆に、博多行きについても、佐賀を境に混雑状況は一変するような状況であり、新幹線を建設するほどの需要が博多-長崎間であるとは思えない。

また、山陽新幹線との直通が実現すれば、新大阪まで乗換なしで行けるため、利便が高まるという主張があるが、これについてもどれほどのメリットになるか疑問である。
そもそも、新大阪-佐賀・長崎間での移動需要によるだろうが、現在の特急かもめのダイヤや、鹿児島ルートの状況を見ても、甘めに見積もってラッシュ時でもせいぜい1時間に1本程度しか直通しないのではないか。
博多に出てしまえば、東海道・山陽新幹線の「のぞみ」はじめ、新大阪方面にはもっと多くの本数が運行されており、博多から新大阪方面の列車はさほど待つことがない。本数が少ない直通列車に乗って長崎・佐賀を出発する場合、出発地で時間を調整する必要もある。

そもそも、大阪と佐賀・長崎両県の間での需要についても疑問である。
今日の日本でビジネス・経済の中心地が東京というのは誰もが認めるところであり、東京と直通するのであればそれなりの需要は見込めそうである。
関西圏も間違いなく日本の大都市圏であるが、首都圏と比べると人口・経済規模は小さい。
(こうした前提があるなか、首都圏に直通する地域北陸・東北など)にくらべると、関西圏までしか直通しない西九州新幹線では観光需要・ビジネス需要など、新幹線により新たに生み出される経済的需要は弱そうである。
推進派は観光需要はじめ、関西圏との往来需要の創出を期待しているようだが、他の整備新幹線ほど見込みは甘くなさそうである。

以上のとおり、賛成派が主張するメリットには多くのクエスチョンマークがつくような状況である。
これに加えて、最初で述べた通りのデメリットも見込まれている。
また、スーパー特急・フリーゲージトレインなど、他の案についてはフル規格反対派が主張しているところである。
長くなったので、これらについては機会があれば書いてみたい。